手を替え品を替え、入念に計画、工事された公園を見る機会が多くなっているが、現場周辺ののどかな山村風景には、そういういかにも修景しましたという公園はどうにも馴染みそうにない。素朴な風景には、素朴な広場がいい。ここでは、一見何の変哲もない単なる原っぱ、でも子供の好奇心をくすぐるようなちょっとした発見がある広場にしようと腐心した。
現地は多くの民話や伝承の残る土地。現在を生きる子供達の想像力から生まれる作り話しも、ひょっとすると将来は昔語りの題材になるかもしれない。伝わってくた物語、これから生まれる物語、全部まとめて面倒を見てくれる「語り部」に見立てて小さな石のオブジェをデザインし、広場のあちこちに忍ばせた。その名は「むらたん」
草の間で、うずくまるように眠りこける「むらたん」。
世間の騒がしさに長い眠りから起こされて不機嫌なのか、口をへの字にして伸び上がる「むらたん」。
過去から未来へ物語を語り続ける「むらたん」は、石の精でもある。石の陰からうっすらと微笑んでいる。