祖父の代に建てられた民家の改築計画である。
改装増築がされていたものの古い民家の木組みは魅力的で、なんとか遺して再生したい建物であった。しかし、阪神大震災で受けたダメージは無視できず、加えて当家の世代交代に伴い発案された賃貸マンションの建設計画などとの関係から旧宅を撤去し新築することとなった。
世代交代に伴う家族構成の変化に対応した個室が欲しい、この機会に整理するとはいえ尚相当な量となる先代から残された家財を納めるために十分な納戸スペースが欲しい、田の字に和室の並ぶ民家とは異なる空間構成として現代生活に適した機能と意匠を備えて欲しい、車を趣味とする長男のための3台分のガレージを確保したい等々、様々な要望に応えながら打合せは幾度となく行われた。結果として、地域の旧家である大作りな民家に暮らしていた家族らしく、延床面積が100坪に迫る大きな住宅となった。
構造は施主の希望もあり壁式のRC造とした。
6m×6m×h3mの立体を縦横3列の計9個、それを上下2層に積み上げた立体格子の中に、パティオや玄関前庭など外部空間を含めて必要諸室を組み込み、実態の敷地形状に応じて寸法調整するという考え方で全体が構成されている。
この住宅でも、家族個人のプライバシーを確保しつつ、家族のふれあいや家族の集う賑わいが住宅全体をダイナミックに満たすこと、日常的な営みの中に自然の光と風をふんだんに取り込むこと、それに新築とともに家族の記憶がリセットされてしまわぬよう旧宅の記憶をさりげなく盛り込むことなどを設計上のテーマとしていることに変わりはない。
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